34年ぶりの円安ドル高

今年の6月は平年に比べ全国的に梅雨入りが遅れています。

例年ですと九州から順に梅雨入りが宣言され、「恵みの雨」と解っていながらも、じめじめした日が続くので憂鬱になりがちです。

しかし、今年の6月は梅雨入りどころか猛暑が続き、大分では気温37度を超える猛暑日を迎えるなど、類例を見ない日が続いています。

この異常気象は「ラニーニャ現象」によるもので、世界規模で被害が出ております。

周知のことと思いますが、この異常気象が発生する原因は太平洋赤道域で概ね南米ペルー沖の海水温が平年より高くなり、1年以上続く現象を「エルニーニョ(ラテン語で男の子)現象」といい、反対に海水温が低いと「ラニーニャ(ラテン語で女の子)現象」といいます。今年はラニーニャ現象によりインドネシア近海の海上では積乱雲が盛んに発生しやすくなり洪水などの被害が起こりやすくなります。反対に、雨が降らない地域では平年より降雨量が少なり、天候に大きな偏りが生じ、至る所で甚大な被害が出ることは珍しくありません。

画像引用先:気象庁

現在、この異常気象により特に被害が出ている地域はインドと中国南部で、インドの首都ニューデリーでは熱波により気温52.9度を観測したそうです。

確かに、インドは赤道付近の国ですので日本よりも暑いですが、気温52度を超えるとなると想像に絶するものがあります。また、中国南部では大雨によって大洪水が生じ甚大な被害がでていることはニュース等で報道され、とても他人事とは思えません。現に、最近の日本でも線状降水帯によって、土砂崩れが生じ、人の命が危険にさらされることも多くなり、大変な災害となっています。過去には異常気象の影響により、米が不作となり「平成の米騒動」と言われたことがあり、しばらくの間タイ米を始め外国産米が出回っていたことを覚えていらっしゃる方は多いかと思います。

そして、この異常気象は今年の米の価格にも影響が出ています。昨年の猛暑の影響もあるようですが端的に言えば、「在庫はあるが異常気象による収穫の見通しに不安要素がある」とのことから、米の卸価格が数十パーセント高くなり外食産業に悪影響が出ていてます。また、スーパーマーケットの米卸売価格が高騰している背景から一般消費者側にも影響が出ているようです。

一方、外国為替市場も約34年ぶりの円安ドル高を迎え、ゴールデンウィークに入った頃には一時160円を超える円安ドル高となり、現在でも同等な円安ドル高水準を推移していることから、原材料価格の上昇や外国輸入品等が須らく高くなってきています。

チャート引用先:Yahoo!ファイナンス

かつては、円安ドル高になると日本の製造業が非常に強い状況下でしたので、日本経済の恩恵は顕著にでていましたが、経済が発展していくと、サービス化にウェイトが傾き製造業のウェイトがだんだんと低くなることは世界共通の見解であり、日本も例外ではありません。その為、2022年から始まった急激な円安ドル高により、去年発表になった貿易統計では過去最大の約20兆円の赤字になってしまいました。

この貿易赤字が日本国内の好景気から生まれる単純な輸入量増加に伴うものならば、景気の循環により解決できるので悪くはないのですが、現在の日本の貿易赤字は輸入量が増えているのではなく、純粋に輸入価格の上昇によって生じた赤字となっているため、景気後退の不安要素となっています。

また、欧米が政策金利の引き上げを行うことにより景気後退の懸念も強くなり、日本独自で輸入価格の調整ができることではないので、日本国内における内需喚起政策が注目される局面です。

このようなことから、異常気象や為替水準、景気動向を鑑みますと今年の春闘で33年ぶりに5%以上の賃上げが決まり、所得が増えると喜ばれる方も多いかと思いますが、素直に喜んでばかりはいられない状況になっています。

そもそもお金の始まりとは 

お金の誕生には諸説はありますが、古代では欲しい物があった場合、現代のようにお金で購入するのではなく、物と物を交換する「物々交換」が主流でした。当時は物々交換が成立するには大変効率が悪く、交換したい人同士が偶然に近い形で互いに欲しいものが一致しなければ成立はし難い環境でした。

例えるならば、当時は現代のような公正価格で取引が行われる市場の存在はなく、食品を長時間保存する冷蔵庫や機材もなく、すぐに腐ってしまう環境であったため、新鮮な肉を持っていて新鮮な魚と交換したい人と、新鮮な魚を持っていて新鮮な肉と交換したい人が出会わなければ物々交換が成立しないという厳しい環境なのです。

その為、ある程度保存が出来て、皆が欲しいと思うような物に代えておく必要があり「貝、米、布、塩」が代表的な物で、これらを「物品貨幣」といいお金の代役を担っていました。余談ですが、古代日本では米のことは稲を指し「ネ」と呼んでいたことから値段の「ネ(値)」の語源になったと言われています。

お金の始まりは貝から

この物品貨幣が最初に誕生した国は古代中国で、紀元前15世紀ごろと言われています。当時、中国ではキレイな貝(代表的な貝は「子安貝」)が物品貨幣に選ばれ貝貨として取引が行われました。

その為、貨幣と貝の関係は以外と深く、お金にまつわる漢字の「ヘン」「ツクリ」には「貝」が付く文字ばかりで、貴金属の「貴」預金の「預」貨幣の「貨」資金の「資」財産の「財」等、殆どがお金にまつわる漢字に該当します。

その後、「周」の時代には農具や刀の形をした青銅貨が誕生し、漫画キングダムで有名な「秦」の時代では青銅貨が円形角穴になり貯蔵や運搬に便利なものに変わりました。